写真を撮るということ。

——瞬間を愛し、未来へつなぐために
私は、写真を撮ることが好きです。
それは趣味だからでも、職業だからでもなく、もっと根っこの部分で「人の時間を、想いを、大切に残したい」と心から思っているからです。
いま、誰もがスマホで簡単に写真を撮れる時代になりました。
日常の中の何気ない瞬間、美しい景色、美味しかったご飯、友人との時間……。撮ろうと思えば、いつでもすぐに残せる。だからこそ、写真というものが「ありふれたもの」として扱われがちな一面もあります。
でも、私は思います。
「写真って、本当はもっと特別なものだ」と。
一枚の写真が人生を動かすことがある

私がこの仕事をするようになったきっかけのひとつは、実家にあるたくさんの古いアルバムでした。
幼いころの私が、両親に挟まれて笑っている写真。
ある日その写真を見たとき、とても優しい気持ちになれました。
「この瞬間があったから、今の自分がいるんだ」と気づいたからかもしれません。
普段、思い出そうとしても忘れてしまうような些細な日々が、写真の中にはちゃんと残っていた。
その一枚が、私にとってかけがえのない”証”になったんです。
それ以来、私は「写真はただの記録じゃない」と思うようになりました。
写真は、未来の誰かへの贈り物
写真は、今この瞬間を閉じ込めるものですが、本当にその価値がわかるのは、ずっと後になってからだと思います。
たとえば、
・子どもが大人になったとき
・離れて暮らす家族にふと会いたくなったとき
・もう会えなくなった誰かを思い出したいとき
そんなときに、写真はそっと心を支えてくれる存在になります。
声も、匂いも、温度もないけれど、その一枚を見るだけで一瞬にして“あのとき”に戻れる。
あたたかな時間、忘れていた感情を、静かに呼び起こしてくれるんです。
だから私は、写真を「未来の誰かへの贈り物」だと思っています。
それは自分自身かもしれないし、大切な誰かかもしれない。
あるいは、まだ見ぬ子や孫たちかもしれません。
撮ることで、見えてくるものがある

写真を撮るという行為そのものにも、大きな意味があります。
ファインダーをのぞき、被写体に向き合うとき——私たちは普段より少しだけ丁寧に、世界を見るようになります。
・窓から差し込むやさしい朝の光
・道端に咲いていた名前も知らない小さな花
・ふと見上げた空の、広さと深さ
・誰かの何気ない笑顔や、まっすぐな視線
そうしたものに、ちゃんと気づくようになる。
写真は「美しさを見つける目」を育ててくれるんです。
そして、その感性は、カメラを持っていないときでも、私たちの心に残り続けます。
写真は、人と人をつなぐ
もうひとつ、私が写真を好きな理由があります。
それは、「写真が、人と人とのつながりを育んでくれるから」です。
たとえば撮影の現場では、はじめましての方とも、カメラを通じてすぐに距離が縮まることがあります。
一緒に笑って、緊張がほぐれて、自然な表情が生まれてくる。
その時間を共有することで、心と心のあいだに、あたたかな絆が生まれていくんです。
写真は言葉のいらないコミュニケーションでもあります。
違う国、違う文化の人たちとも、写真一枚で気持ちが伝わることがあります。
言葉では届かない想いも、写真ならきっと届く。
そんな力を、私は信じています。
最後に——写真は「今を愛する」こと

私たちは毎日、たくさんの「今」を生きています。
でも、その大切さには、なかなか気づけないまま過ぎていってしまう。
だからこそ、写真を撮るということは、「今を愛すること」だと思うのです。
一枚の写真が、過去を彩り、未来を照らし、「今」の価値をそっと教えてくれる。
それは、何にも代えがたい大切な行為だと私は信じています。